おしごとお疲れ様(平成22年度2月)平成23年2月

先日の保育参観には、大雪の中、たくさんの保護者の方がおいでいただきました。親の手の届かない所で我が子がどのような様子で生活しているのか、きっとどのお父さんもお母さんも観て知りたいと思っておられる事でしょう。そんな気持ちが手にとるようにわかる程、参観日には、毎回たくさんの保護者の方が時間をつくって来てくださいます。幼稚園の参観日には、ご両親揃っての参観が多く見られます。子供達もお父さんやお母さんに来てもらうのを楽しみにしているようです。

振替休日明け、ある子に「○○ちゃんは参観日には誰に来てもらったの?」と聞くと、「お母さん!あのね、お父さんはお仕事で来れなかったの。」と笑顔で答えました。「日曜日だったのに、お仕事だったんだね。」と私が言うと、「そうよ!泊まりだったの。」───「そう!お泊り?楽しいのかな。」とわざと言うと「違うよ!夜中でも忙しいのよ。だって、泥棒は夜中にお家に入るからつかまえないといけないでしょ。」と…。その子のお父さんの仕事は警察官です。不規則な体制の仕事に、子供達の行事だからと必ずしもお父さんが来れるとは限らないのです。きっと、お父さんにも来てもらいたいでしょうに……、来てもらえないという事を残念に思っているなずなのに……。その子の話しぶりは、お父さんが忙しい事を十分に理解していて、「お父さんはお仕事が忙しい。頑張っている。」と納得しているのです。そして、また感心した事は、その子はお父さんが毎日どんな仕事をしてどんなに頑張っているかがよくわかっているという事でした。

そんな事もあって、ある日、私は「お父さんのお仕事は?」と子供達に聞いてみたのです。すると、首をかしげて、「うーん?わからない」という子が案外多い事に気づきました。お父さんは毎日仕事に行くものだ…と漠然としか思っていない子が多い事にも驚きました。多分お父さんの仕事を何と言ったらいいのかわからなくて返事に困ってしまったのでしょう。お母さんの仕事もなかなか説明できない子がいます。例えば、「お母さんの仕事は病院。」とは答えられるけれど、「病院で何してるのかな?」と聞くと、「うーん?」と困ってしまうのです。看護師さんなのか医療事務なのか、薬剤師なのか、病院の仕事の中にもいろんな仕事があるのだから、ぜひ、そこまで子供達に教えてやって欲しいと思うのです。

昔、建設会社にお勤めのお父さんの子が、「わたしのパパはトンネル掘ってるんだよ。そのトンネルを昨日見に行ったの。」と話してくれた事がありました。お母さんにその話をしましたら、「見せてやったら、パパってかっこいい!って思ってくれるかなと思って…。」と冗談っぽく言っておられました。私は、それはとても大切な事だと思いました。あんな大きなトンネルを作る仕事に携わっているパパは、子供達にとってヒーローなのです。冗談ではなく、きっとパパ!かっこいい!と本気で思ったことでしょう。

毎日「お仕事に行ってくるね。」と言って出かけられるお父さんやお母さんを「いってらっしゃい」と見送ったり「お帰りなさい」と迎えたりする子供達は、その姿をどう思っているのでしょうか?あまりにも毎日の事で、当たり前の事になってはいないでしょうか?誰のために?何のために?どんな思いで仕事をしておられるかという事を意識させてあげてください。お父さんやお母さんが仕事をしているイメージが浮かばないまま「いってらっしゃい」「おかえりなさい」と言ってはいないでしょうか?「お仕事頑張ってね」とは言うけれど、お父さんってどんな仕事をしているのかを教えてもらえていなかったら、きっとイメージできないでしょう。一口に「会社」といってもいろんな会社があり、その中でどんな事をしているのか…見せてやることができなければ、話してあげるといいと思います。あなたのために…家族のために…という事だけではなく、その仕事に誇りをもって頑張っているお父さんやお母さんは、子供達にとって輝いて生き生きしていて素敵に見えると思うのです。たとえ幼い子供でも、話してやったり見せてやったりすることで、幼いなりに具体的に理解して自分なりの感謝の気持ちや労いの言葉が心から言えるようになると思います。

老人福祉施設で働いておられるお母さんの仕事の事を「私のお母さんは、おじいちゃんやおばあちゃんのお世話をしたり話を聞いてあげたりするお仕事なの。」と教えてくれる子もいます。何となくでもお母さんがどんな事をして頑張っているか、そしてその事によってお年寄りの方々に喜ばれている…すごく大切な仕事をしているんだという事がわかっているのです。その子はきっと、お母さんが疲れた顔でおられる時には「大変だね」といたわりの言葉をかけてくれるでしょう。お母さんがどんな事をして疲れているのかがイメージできるからです。お父さんがパトカーや消防車・救急車に乗って夜中の街や命を守るヒーローだったり、会社や学校や施設でいろんな人と関わる、家とはちょっと違うかっこいいお母さんだったり…。そんなお父さんやお母さんをあらためて尊敬できるようになるはずです。

お子さんに、「お父さんの仕事って何か知ってるかい?」「お母さんはどんなお仕事をしていると思う?」と聞いてみてください。どんなに頑張っているかを子供達は知ってくれているでしょうか?

「お父さん、お母さん、いつもお仕事お疲れ様。」って言ってくれるかな?

心の休憩所(平成22年度1月)平成23年1月

新年あけましておめでとうございます。明るい新年を迎えられた事と思います。本年もどうぞ宜しくお願い致します。

お正月と言えば、普段あまり会うことのないおじいちゃんやおばあちゃんに会えたり、親戚が集まったり、家族でのんびり過ごしたり、色々と思い思いの何日かを過ごされた事でしょう。

我が家の年末年始は親戚の人達がたくさん挨拶に来られます。娘達は、普段会えない親戚のお兄さんやお姉さん、自分達より小さな子供や赤ちゃんに会えるのを楽しみに迎えます。そして、一緒に食事をしながら、色んな話をします。以前は、大人同士の話だったので、加わることもなかったのですが、最近は一人前に話に加わって来るようになりました。

そんな時、普段、私達親には言わない事を親戚の人達に話す事があります。「お母さん、そんな話、初めて聞いたよ。」ということが発覚するのです。今なら、お母さんも叱らないだろうという魂胆もあるかもしれませんが……、この時とばかりに色んな話をします。 親と子だけの時には、笑い事では済まされない事が、親戚のおばさんやいとこの前では、何故だか笑い事になり、たいした事ではなくなるような気がするのだと思います。どうやら、親戚の人達が子供達にとってはワンクッションになっているようです。確かに、その話を受け止める私達親はすぐに“指導しよう”とか、“育てる責任!”等という考えが先に来てしまい、軽く聞き流して欲しい子供達にしてみれば、窮屈なのかもしれません。親戚の人達にはその点、客観的に聞いてくれたりみてくれたりする余裕があるので、笑いながら相談にのってもらえます。そして面白い事に、子供達も、さすがに、誰でも彼でも話をしているわけではなく、おしゃれの話はこのお姉さん、恋の話はこのおばちゃん、勉強の話はこのお兄ちゃん、お父さんやお母さんへの苦情はこのおばちゃんとおじちゃん、おねだりはおじいちゃん……と、何となくジャンル別に相談相手を決めているようです。子供達から格別な信頼をおかれている人達です。その親戚の人達の事を私達夫婦もまた信頼をおいています。そして、私達の子育てや環境をよく理解してくれていて、いつでも力を貸してくれる絶大なる協力者です。こっそり子供達が相談したであろう内容も、これは!という事は私達に「あの子、こんな事悩んでいるみたいよ。」と伝え、アドバイスをしてくれます。子供はいつまでも、親に何でも話してくれる…というものではないようです。親もいつも完璧で正しいとは限りません。間違っていたり失敗していたりする事だってあるのです。親は知らず知らずのうちに考えを押しつけてしまっていたり、子供を傷つけたり追い詰めたりして、親であるという“おごり”が子供と親の間に半透明な壁を作ってしまっているという事に気づかされます。つい、子育てに必死になるが故に笑い飛ばして聞いてやる広い器を失くしてしまうからです。子供が、自分の思っている事を自由に言えて、自分の目線に立って一緒に考えてくれる人が周りにいる事は、それだけで子供にとっても親にとっても安心な事だと思います。それは、“心の休憩所”です。

悲しいかな、大きくなると親だけでは物足りない事や、親では駄目な事だって出てきます。そんな時にこの“心の休憩所”はとても必要だと感じます。それは、友達であってもいいかもしれませんが、自分とそれほど違わない人生経験なので、解決策は見つからないまま同調だけで終わったり、慰め合い共に道に迷ったりする事になったりします。それが、経験豊富なおじいちゃんおばあちゃんであったり、近所のおじさんやおばさん、親戚であったりすると、聞き役だけでなく何らかのアドバイスを求める事ができます。そして、不思議とその人達のアドバイスなら、す~っと子供の心の中に入って素直に聞けるようです。(そんな時、いつも親として反省させられるのですが…。)子供達がそうできる環境をつくっておいてやる事も必要ではないかな?と思います。そのためには、私達親も、いつも周りにいてくれる人達と信頼関係を結び関わり合っていないと、周りの人達も振り向いてくれません。ありがたい事に私の周りには、近所や親戚の人達も子供達を私と一緒に守ってくださっています。いつも気にとめてくださっている事が私達親にとっても“心の休憩所”となっている事に間違いありません。昨年は、親にも相談できなくて、誰にも言えなくて、一人で悩み自分をあやめる子供達のニュースをたくさん聞きました。「どうしたの?」「話してごらんなさい。」というオーラを周りから感じながら成長できる子供は幸せだと思います。何もかも、親がしなきゃいけない…のではなく、親にできない事は周りの人達に託せる……、その環境づくりこそ親にしかできない事なのかもしれません。時に煩わしいと考えられがちな親戚づきあいや近所づきあい、人づきあいですが、いい関係を築いていく事によって、私達親と子供達を一緒に育ててもらえる環境づくりでもあるのです。

幼い間の子供達は、お父さんお母さんが一番ですが、成長と共に世界を広げ、親の手の中に納まりきらなくなり、悩む時もあります。その時の親と子の“心の休憩所”、……ありますか?

今年のお正月も何やら親戚のおばさんに愚痴をこぼしていた娘。聞かぬふり聞かぬふり…ここはお任せしましょ。ありがたやありがたや。