子供達にありがとう(平成22年度11月)

今年の夏は、異常とも言える猛暑となりました。動植物の生態系にも異変が起きているようです。最近ニュースでよく耳にするのは、クマやサルが山から里に下りてきて、人を襲ったり作物を荒らしたりしているという事です。異常気象でブナやカシの木にそれらの好物であるドングリや栗が実らなかった事が原因の一つにあるようです。そう言えば、毎年この時季になると幼稚園の子供達も青々しいドングリの実を見つけて喜んでいるのですが、今年はまだそんな姿を見ないような気がします。当たり前の事が当たり前に……、これは、自然に支配されているのかもしれません。


その影響を受け、幼稚園では今年の運動会を例年より遅らせて開催しました。涼しくなってから本格的な練習に取り組めるようにと考えての事でした。無事開催できた秋季大運動会は盛会裡に終える事ができました。毎年子供達の頑張る姿には胸が熱くなります。涙がこぼれます。そんな時ふと思うのです。「最近こんなに感動して胸が熱くなった事があるだろうか?」…と。感動的なシーンにテレビや書物で触れた時にはあるかもしれませんが、生活の中で、何かがあって感動する事はそんなにないのではないでしょうか?青春時代なら胸高鳴る恋愛や自分自身の人生の選択においても一喜一憂しながら涙する事もあったでしょう。でも人生ひと山越えた頃にはなかなかそんなドラマチックなシーンに出会うことはありません。ですが、子育てにおいては、感動する事がたくさんあります。子供達が私達を感動させてくれるのです。ここ数年を振り返ってみてください。飛び上がるほど喜んだり、身体が震えるほど怒りを覚えたり、涙をこぼしたり、この上なく楽しいと感じたりしたその先にはいつも子供達の存在があったのではないでしょうか。それがどんなに私達大人にとって幸せな事かを思うのです。


私はいつも行事の度に取り組みはじめた頃の子供達の様子や先生の様子、本番までの見え隠れする先生と子供達とのドラマ、そして本番の子供達、それを見守る保護者の方々の様子…それら全てに感動します。運動会でも、それぞれに子供達が一生懸命でしたし、楽しそうでした。そして、運動会後に寄せられた保護者の方からの感想には、どれも我が子の成長への驚きや喜びと、ありがたい事に先生達へのそれまでの労いと感謝の言葉を添えていただいていました。


我が子の活躍に胸を熱くして手を叩き、抱きしめたくなるほど愛おしく感じたりしてもらえた事と、子供達のそんな成長の記録にほんの少しでも関われている事に喜びを感じました。
子供って、そこにいてくれるだけで私達大人に感動を与えてくれます。お腹の中に生命が宿った事を知った時から始まる感動のドラマは、その先、些細な事から大きな事までの何もかもが心を動かしてくれる長編作となるのです。幼稚園に入園するまでは、自分が手をかけて育て、我が子の成長を誰よりも近くで見てこられたでしょうが、入園と同時に小さな社会に送り出し、人の手に委ね、こうした節目節目にその成長をふと目の当たりにした時の感動は何とも言えないものがあると思います。運動会の日の朝、どのお父さんもお母さんも、お子さんに「頑張ってね。応援しているからね。」と送り出された事でしょう。そして、先生や友達と楽しそうに一生懸命に頑張っている姿に感動し、運動会終了後、お子さんを迎えた時のお家の人達の目は、とても温かかったように思いました。お子さんを迎えられた時の第一声は何でしたか?「頑張ったね。えらかったね。凄かったよ。……」とお子さんを褒めてあげられたのではないでしょうか?その裏には、感動させてくれた我が子に「ありがとう。」の気持ちもこもってはいませんでしたか?我が子のそんな姿を見て、喜びを味わえた事に感謝しませんでしたか?
周りを見てください。子供のおかげでできたママ友、パパ友、出会えた人達、場所、得た知識……。子供を通して、自分の環境も作られてきている事に気が付かれるでしょう。子供達が世界を広げてくれているのです。その中で、笑ったり泣いたり、喜んだり怒ったりという感動があるのです。淡々と過ぎる日々も幸せでいいかもしれませんが、まだまだ若いうちは、心躍らせる日々にエネルギーを使ったり、またそうする事でエネルギーを充電させてもらうのもこれまた楽しいものです。


運動会が終わって、子供達は先生達から素敵なご褒美をもらっていました。この運動会を頑張った印にして欲しいと渡したプレゼントです。あのご褒美は、子供達へのものでしたが、それを手にした時の子供達の達成感と満足感と自信に満ちた最高の笑顔は、これまでのお子さんの成長を見守って来られたお父さんやお母さんが手にされたご褒美だったかもしれませんね。こういう節目に、改めて子供の存在の大きさや意味を感じたり、子育ての苦労が報われたりするのではないでしょうか。子供達!私達大人にたくさんの感動を与えてくれて、どうもありがとう!


これから、まだまだ子供達は私達にいろんな感動を与えてくれます。何しろ、長編大作ですから…。それはまだまだ、始まったばかりです。さて、この先どうなるかはおたのしみ…。