50兆?分の1の奇跡を抱きしめる(平成22年度6月)
先日、三次中央幼稚園の姉妹園である子供の城保育園の運動会が行われ、私も園長先生と何人かの先生と一緒に応援に行きました。乳児から5歳児までの小さな子供達の笑顔がたくさん見られた微笑ましい運動会でした。保育園の運動会は子供達がまだ小さいという事と、親子が触れ合える時間作りの意味でもあるため、親子競技がたくさん組まれています。背中におぶってもらったり、抱っこしてもらったりして、身体も気持ちもいっぱいくっつき合って一日を過ごす子供達とその保護者の笑顔は本当に幸せそうで、観ている私達までもが温かい気持ちになりました。
その様子を見ながら、少し前に幼稚園のある保護者と子育ての話をした時の、「この子と私が会えたのは、何億分の1の…いえいえ、もっとすごい奇跡なんですよね。」というお母さんの言葉が思い出されました。専門的にはよくわかりませんが、体内で妊娠が成立する確率は生理学的数字で言えば3億分の1なのだとか…。毎日の子育てに一生懸命な時には、そんな事を思い出す事もないけれど、あらためてそう考えたら、この子を大切に育てていこうと思わせられる──という話をしたのです。また、ある記事には、この世で我が子に出会える事は、人が人として生まれ、ある人がある人と出会う、そして月日を重ね…そのそれぞれの確率を考えれば、50兆分の1の奇跡なのだともありました。
実は、私は結婚してなかなか子供に恵まれませんでした。その間色んな病院に通いました。病院だけではなく、妊娠しやすい身体に変えるために良い整体院があると聞けば県外にも行き、良い子宝寺があると聞けば手を合わせに出かけました。周りの人達の言葉に励まされたりプレッシャーを与えられたりしながらもコウノトリが私達のところにやってきてくれるのを一生懸命に待っていました。そして、結婚7年目にしてやっと娘を授かったのです。幸せで幸せでたまらなかったし、赤ちゃんができるって、こんなに周りのみんなが幸せな気持ちになれるんだなと我が子に感謝したのを思い出します。妊娠が分かった時、驚きと安堵からか、義母の腰が抜けて座り込んでしまった事、微弱陣痛でなかなか産まれて来てくれず、やっと産声をあげた時、タオルで包まれた娘を宝物のように抱いた瞬間の主人の第一声は「嫁にはやらん!」だった事、義理の姉が「みんなでこの子を大切に育てようね」と、自分の子のように愛おしそうに抱いて、私達も力になるよという心強い言葉をかけてくれて涙が出た事、そんな事を思い出しながら、保育園の運動会での親子の姿を観ていました。この子達一人ひとりが50兆分の1の奇跡の宝物なのだ。その奇跡に感謝して、これからこの親子は何年も色んな形の愛を育んで行くんだなぁ…。そう思うと胸が熱くなってきたのです。働きながら子育てをしている私も、娘が幼かった頃は、そんな奇跡なんて思い出す事もなく、毎日バタバタしてゆっくり話をしてやる事も聞いてやる事もできない…。知らない間に眠ってしまった娘を見て(可愛そうな事をしてしまった。ごめんね。)と頭をなでながら、謝ったことが何度あったことか。それでも、子供ながらに忙しい親の事を理解しようとして、我慢してくれていた事も沢山あったと思うのです。仕事をしているしていないにかかわらず、その奇跡の出会いを思いながら、毎日生活している人はそんなにいないのではないでしょうか?結婚して子供が生まれ家族が増え、賑やかな楽しい生活…これが、当たり前だと思っているけれど、よく考えたら、この当たり前に見える生活は実は50兆分の1の確率で自分にやってきた幸せなのだと気づくのです。
もし、この子が私のところにやって来ていなかったら…そう考えてみてください。今のこの生活はなかったし、生き方も全く違っていたでしょう。とても考えられないでしょう。子育てって、大変な事もたくさんあるけれど、それを思うと、この子には私達しかいない!!と頑張れるし、私達にしか味わえない50兆倍の幸せを噛みしめられるのです。保育園の子供達もお父さんやお母さんに沢山抱きしめられていました。抱きしめてもらえて、不幸な顔をしていた子は一人もいませんでした。
そんな保育園の運動会を観た翌日、いつものように、中門で幼稚園の子供達を受け入れました。その日は大変な雨でした。我が子が雨に濡れないように自分は濡れてでも傘をしっかり差しかけておられるお母さん。「いってらっしゃい。しっかり遊んできてね。」と優しく送り出しておられるお母さん。「行って来い!」と軽く言い放ったものの、心配で何度も振り返りながら幼稚園を後にされるお父さん……そんなお家の方々の姿を見ると、なんて幸せな子供達なのだろうと思いました。身体いっぱいで、心いっぱいで抱きしめられています。幼稚園の子供達も保育園の子供達も、これからもっと成長していきます。その間には、誉めたり叱ったり、抱きしめたり突き放したり…いろんなかかわり方をしていかれると思います。出会えた奇跡に感謝しながら、子供の事を思い真剣に向き合う事、その全てが“子供を心いっぱいで抱きしめる”という事だと思うのです。
そして先日、50兆分の1以上の奇跡で私のところにやってきてくれた我が娘も16歳の誕生日を迎えました。夢中でここまで来て、『やっと16…』と思えたり、『あっという間に16…』と思えたり、色んな気持ちになります。娘に「おめでとう!」の言葉を贈ると、「これからもずっと家族みんなで仲良くしていこうね。よろしく。」と返してくれました。私は、“本当は、数字では表せないほどの奇跡で、あなたと出会えたのよ”と、心で語りかけました。
2010年5月31日 3:01 PM | カテゴリー:葉子先生の部屋 | 投稿者名:ad-mcolumn