母の日(平成19年度6月)

5月13日の日曜日は、母の日でした。皆さんのご家庭では、どのような一日を過ごされたでしょうか?街では、どこの花屋さんもカーネーションであふれていました。遠い場所に住んでおられるお母さんに送られるのであろう郵送用にラッピングされた花も、いい香りを漂わせていました。幼稚園では、先生や友達と一緒にお母さんへのプレゼント作りに子供達は張り切っていました。新入園児も慣れないクレパスを使ってお母さんの顔を描きます。年中・年長組では、のり・はさみ・クレパス全ての用具を使って工夫しながら作ります。難しくても少々大変でも、頑張って作っていました。途中で休憩する子はあっても「もう作らない!やめる!」と投げ出す子は一人もいません。だって、大好きなお母さんへのプレゼントですから……。


かく言う私も“お母さん”。ちょうどその日は、朝から所用で出かけておりました。忙しくしていたので、実家の母へのプレゼントと亡くなった義母の仏前に供えるお花の手配をして、それからは、すっかり母の日の事を忘れていました。用事を済ませて、帰宅したら、玄関にまで漂ういい匂い……。部屋に入ってみると、インターネットで開いたレシピを見ながら主人と二人の子供が、ハンバーグを作っていました。テーブルの上には、娘達からのメッセージが添えられたかわいいお花が飾ってありました。その日の夕食のメニューは、ハンバーグと大根の酢の物と畑で採って来たさやまめのマヨネーズ和え(?)と実に独創性に富んだものでした。手伝おうとしても「お母さんはいいのいいの、ゆっくりしていてほしいの!」と拒みます。できあがるのが楽しみでしたし、何より私のことを一生懸命喜ばせようとしている三人の姿がとっても嬉しかったです。


園長先生にも、広島で一人暮らしをしている娘さんから“おかあさんありがとうメール”が届き、私にも読ませてくださいました。とても嬉しそうでした。
翌日、園バスの中で子供達に、こんなふうに聞きました。「昨日は母の日だったけど、お母さんに何かしてあげた?」──すると、子供達から、「おすしを食べた。」とか「“ありがとう”って言ったよ。」とか色々とお母さんを喜ばせてあげた事が覗えました。そして、「ねぇ、お母さんの事、好き?」と聞くと当然「うん、好き!」と答えました。「どうして好きなの?」と“優しいから”とか“きれいだから”という返事を期待して聞くと、ある子がすごく悩んで、ぼそっと「ママがそこにいるから…。」と言いました。また、ほかの子に同じ質問をすると「好きなんだもん。」─「だから、どうして?」と再び聞くと「好きだから!」「好きだから好きなの!」と言い切られてしまいました。


そうなんです。よく考えたら愚問でした。理由なんてないのです。だって、ママの事ならどんな事でもどんな時でも大好きなんですもの。理由にならない言葉にならない気持ちなのでしょう。実際、自分でも聞かれたら、返事に困ると思います。“好きなものは好き!”ですよね。ただ、お母さんが自分のそばにいてくれる生活は、子供達にとって当たり前の事で、お母さんの存在が自分にとってどんなものであるか等考えているはずもありません。どんなに大切な存在かなんて、毎日の生活の中では考えることもないのではないでしょうか。『母の日』は、この日を機に“自分にとってお母さんって…”と考える日、お母さんを見つめる日のような気がします。

だんだん大人に近づき、それまでお母さんにしてもらっていた事を自分がするようになってきた時、やっと本気で“お母さん”について想うようになるもののようです。(毎日のご飯作りは大変だったろうな。)(私が病気した時は心配かけたなぁ。)(お母さんも苦労して、私達を育ててくれたのね。)等いろいろ想うと、お母さん像がどんどん大きくなってくるのです。だけど、きっとその時お母さんは、大変だとか辛いとか苦労だなんてちっとも思わず、私達を大切に…ただただ愛して育ててくれたと思うのです。だって、皆さんも、お母さんとなられた今、無償の愛で子育てをしておられるでしょう。いつの時代も“お母さん”の何の見返りも期待しない子供にむけられる愛は“静かなる大きな存在”なのです。気づこうとしなければ気がつかない愛情なのかもしれません。


お母さんの存在の大きさに気づいている子は、お母さんを大切にします。「好きだから好き!」という具体的な言葉がみつからないくらいの感覚で、当たり前の存在でいいと思いますが、一年に一度くらいは、心から“お母さん”に「ありがとう。大好き。」って言わせてやって欲しいと思います。これは、お母さんのためだけでなく、無償の愛をたっぷりもらっている子供達のためにも大切な事だと思うのです。

そのためには、お父さんをはじめまわりにいる家族の“お母さんの愛”に気づかせてやる言葉かけが必要です。「今日は母の日だから、何かプレゼントしたら?」──ではなく、お母さんの話を家族みんなでするだけでも、純粋な子供達は気づきます。『母の日』はそういう日のような気がします。お父さん!母の日こそ父親らしく…お願いしますね。そして今月は『父の日』ですからね。