スズメバチ(平成16年度)12月

6月に田房葉子先生のお家の田んぼで、年長組の子供たちが田植えをさせてもらいましたが、秋の収穫の時になって、楽しみにしていた稲刈りが、急遽、中止になったのです。その理由は、台風が続けてきたことに加えて、オオスズメバチとコガタスズメバチかキイロスズメバチかが空中戦をしていて、「ハチが大騒ぎをしているから、気をつけてください。」と、近所の人から田房先生の家に連絡が入り、その上、その様子を見に行かれた田房のおじいちゃんも、実際、ハチに刺されてしまったのです。このことがあって、子供たちが楽しみにしていた稲刈りを中止せざるを得なくなったのです。そのため、おじいちゃんは、実った稲を子供たちに見せてやりたいと、鎌で稲を刈って、その稲穂を子供たちにことづけて下さったのです。


このようなハチの空中戦を、以前、私も見たことがあります。二十年位前のことですが、幼稚園の砂場近くの(今は子供の城保育園の園庭になっているところ)隣家の方が新しいお家を建てられたのですが、その軒下の戸袋になっているところに、小さな穴を開けて、その中にオオスズメバチが巣を作っていたのです。
ある日、砂場のところに行ってみると、なんと、ハチ同士が空中戦をやっているのです。そして、砂場を見ると、ハチの頭の部分と尾の部分がバラバラになって、何匹も、墜落してくるのです。なんと、コガタスズメバチの胴の一番細いところを、オオスズメバチが噛み切っているのです。
この空中戦は、おそらく、オオスズメバチが巣の近くに侵入して来たコガタスズメバチを追い払うために戦いを始めたものと思われます。こういう情景はめったに見ることもありませんので、私にとってはすごく良い経験をしたのです。


もうひとつ思い出しました。小学校6年生の時です。通学路に無人の神社があります。ある日、同級生の男の子と一緒に家に帰る途中、その神社の軒下にキイロスズメバチの大きな巣を見つけたのです。ワンパク盛りの二人は、すぐさま、小石を手に持ってその巣をめがけて投げつけたのです。すると、その巣からスズメバチが一斉に飛び出し、私たちをめがけて襲いかかってきたのです。二人は必死で走って逃げましたが、帯を描いたように追いかけています。足の速いことが自慢だった私は、もちろん、彼よりもずっと前を走っています。
突然、「ギャー!!」という叫び声が聞こえました。振り向いてみると、彼は両手で頭を抱えて座り込んでいます。ハチの集団に刺されているのです。彼を刺したハチは間なしに退散して行きました。彼のそばに行ってみると、なんと、頭の何か所にも刺されていて、見る見るうちに腫れ上がってきます。頭を抱え込んだ手も何か所か刺されています。彼は大きな泣き声を上げながら、私と一緒に、家まで帰って行ったのです。今考えてみると、とても危険なことだったのです。スズメバチに刺されてショック死をしたというニュースを耳にする度に、このことを思い出しているのです。反面、昔の子は強かったのではとも思ったりしています。


よくハチに刺される人がいます。スズメバチのような大きなハチではなくても、軒下や植木の中に小さな巣をしているアシナガバチに刺されるのです。なぜ刺されやすいかというと、ハチが自分のところに近づくと、大騒ぎしたり、手で追い払おうとしたりするからなのです。手を振るって追い払う行為は、ハチにとっては、攻撃姿勢なのです。攻撃されていると思うから刺しにくるのです。
もちろん、スズメバチにしても、巣の近くに危険が迫ったと感じたときは一斉に襲いに掛かりますから、ガサガサ音を立てたりしないように注意が必要です。ハチの巣は熊などの動物に襲われることが多いので、黒い髪には攻撃的で、白いものにはあまり襲ってはきませんが、基本的には、じっとしていたら襲ってはこないのです。


今月のつぶやきのテーマが、「スズメバチ」になったのは、実は、我が家の屋根裏にキイロスズメバチが大きな巣を作っていて、11月の終わりになってその巣を退治したからなのです。中庭側の軒下から出入りしているスズメバチを早くから見つけてはいたのですが、ハチが子供を育てている間は危険なので、寒くなって働きバチが死んでしまうのを待っていたからなのです。

働きバチは、何匹かの新しい女王バチを育てて死んでしまいますが、女王バチは、枯れた樹木の中に入って冬眠します。春になって、女王バチはキノコを逆さにしたような巣を作り、何匹かの働き蜂を生んで育てます。その働きバチが成長して、巣をだんだんと大きくしていきます。そこに、また、女王バチが卵を産みつけ、働き蜂を増やしていきます。巣が完成したら、新しい女王バチが育つよう巣の中の卵を数匹選んで蜜をたくさん与えると女王蜂が誕生するのです。写真は我が家に作ったキイロスズメバチの巣の外側と内側を撮ったものです。なんだか、まだまだワンパク気分が残っている私でした。