あいさつ(平成13年度10月)

2学期が始まって間なしに、朝、幼稚園の正門に立っていると、バスで登園してきた子供たちが、一様に元気がないのです。「おはよう」と声を掛けても、「ちらっ」と私の方に目をやるだけで、あいさつをしてくれません。しかも、だらだらだらだらと歩いているのです。次の日も同じなのです。先生たちにそのことを話すと、私と同じように感じていました。しかも、1学期もそうだったと言うのです。また次の日も、しきりに「おはよう」と声を掛けるのですが、いっこうに返事が返ってきません。とにかくみんなだるそうで元気がないのです。


このことで推測したのが、どうも睡眠不足ではないかということでした。最近の家庭は、夜型傾向が強くなっていると言われます。テレビゲームやファミコンに夢中になれば時間は瞬く間に過ぎてしまいます。そのため子供たちも、結構、遅くまで起きている場合が多く見られます。そのせいで、朝早く起きることができなくて、幼稚園に行く時間が近づいてきて、無理やりに起こされ、目が開いていても、脳や身体がまだ起きていない状態で来ているのではないかと、あれこれと考え込んでいました。


朝ご飯にしても、起きたばかりでは食欲がありません。朝食の1時間ぐらい前には起きていて欲しいものです。朝食をきちんととってくると、昼食もしっかりと食べることができます。朝食をとらなかったら、お昼にはお腹がすいてたくさん食べられるように思われがちですが、逆なのです。朝食をちゃんと食べると、昼にはきっちりとお腹がすいてくるのです。
中には、口におむすびを放り込まれて、その口をほおばったまま、慌ててバスの停まるところまで走ってくる子も、時々、見かけられます。食べないまま登園する子もいます。


私が子供のときは、小学生からの記憶ですが、夜8時が限度でした。日が暮れるまで遊んで、風呂に入って、夕食が済んだら「バタン・キュー」で寝ていました。朝6時の起床でしたから、10時間はしっかりと寝ていました。「寝る子は育つ」と昔から言われているように、今でも、子供の健全な発達には10時間の睡眠が必要と言われています。子供は全身を使って、一日中、動き回ります。雨の日など外で遊べないとなると、部屋中を走りまわって、運動不足の身体の調整をしています。ところが、余り動き回らない生活が続くと、身体も慣れてしまい、テレビゲームの前で何時間座っていても平気になってくるのです。


話はそれますが、今、幼稚園に併設の保育園等の新築工事で、いろいろな業種の方が工事に携わっています。工事を請け負った建設会社の他に、水道工事、電気工事、大工工事、左官工事、塗装工事、鉄工事、板金工事、硝子工事、建具工事、土工事、ナマコンの搬入、型枠工事、足場工事等々、様々な業種の方にお世話になっています。時々、工事の様子を見に行くのですが、その中で、ある業種の会社の方全員が、「おはようございます」、「お世話になっています」と、必ず丁寧にあいさつをされるのです。その会社の社長さんは、たばこを吸っても、携帯用の吸い殻入れに入れて、ポケットに納められます。もちろんあいさつも丁寧です。これも昔から、「この親有りて、この子有り」と言われるのと同じように、「この社長ありて、この社員有り」と実感するほどなのです。そのあいさつだけで、私のその会社に対するイメージは抜群に良いのです。その会社の人に会うのが楽しみに思うほどなのです。そのあいさつに出会うと、一日が気持ちよく過ごされるのです。私も意識して、他の業種の人にあいさつをするのですが、中には、返事の返ってこない人もたくさんいます。人とのかかわりあいの中で、良い関係を保つためには、あいさつはとても大切なのです。


そんなことを想いながら、バスから降りてきて、元気がなく、あいさつもしない子供たちが多いので、ずっと気になっていたのです。家庭でも、周りの大人が、毎日、「おはよう」と声を掛けてもらっている子供は、幼稚園に登園してきても、子供の方から、ちゃんとあいさつをしてくれます。でも、今回は、バスから降りてくる子の多くがそうなので気になっていたのです。


でも、やっとそれらしい原因が分かりました。最近はずいぶんと涼しくなってきました。そのころから、もとの元気な子供の姿が見られるようになり、あいさつもしっかりしてくれるようになってきました。きっと暑かったのです。今年の夏は、6月頃から異常なほどの猛暑が続きましたが、余りにも暑すぎて、子供たちはその寝苦しさから、充分な睡眠が採れなかったのではないかと思います。


やはり、睡眠不足は、子供たちの一日の生活に大きく影響するのです。小学校に入学しても同じことが言えます。睡眠不足や朝寝坊をしたまま学校に行くと、脳や身体が目覚めるまで時間がかかります。頭の回転が鈍く、勉強にも集中できないのです。


「早寝早起き、よく食べよく寝る」、これが、子供の成長にとっての基本原則です。そして、あいさつは人間関係の潤滑油なのです。あいさつは、周りの大人がが積極的にあいさつをすることで、身に付いてきます。9月30日は運動会です。子供たちの元気な姿を目の当たりにしてもらえるものと思います。