えほん こうざ

●絵本を毎日読んであげましょう。

絵本のある生活は心豊かにしてくれます。絵本を読みきかせることによって、親の口から、リズミカルで詩的で文学的な言葉が流れてきます。子供達は、お父さんやお母さんの膝に抱かれたり添い寝をしてもらって、親の愛を感じながら心地良く聞き入ります。そして、絵本の絵と今までの生活経験を手掛かりにして、想像力を働かせ理解を深めていきます。それと同時に、親子の共通の生活経験にもなります

●楽しんで読みましょう。

絵本が好きになると、子供達は毎日読んでもらうことを要求してきます。忙しくても、面倒がらず、親子の触れ合いの素敵な時間だと思って、楽しみながら読んであげてください。
 良い絵本とは、読み終わったときに「あー、楽しかった。」「おもしろかった。」と子供達が感じる本です。一冊の本が、子供を楽しませれば楽しませるほど、その本の内容は、子供の心により深く残るのです。

●読みっぱなしにしてください。

楽しくするためには、教えよう、教えたいという気持ちを押さえることが大切です。解説したり感想を求めたりしようとしないことです。
 読みっぱなしがいいのです。読んでもらった後、子供達はその余韻を楽しんでいます。大人が、映画館を出たとき、しばらくは主役の気分でいることがありますが、そんな気分なのです。そっとしておいてください。絵本ぎらいにさせるのは、しつけに使ったり、感想を求めたりするからです。

●絵本から育つもの

絵本は子供が初めて出会う世界・発見の世界・主人公になれる世界です。「見る・感じる・考える・理解する―そして、再び見る」どんどん広い知識を吸収していきます。
 物事をじっくり考えたりする思考力や判断力もつき、自分の考えをしっかりと持つようになり、相手の違った主張や考えがあることも理解できるようになります。やさしい心、美しいものに憧れる心、思いやりの心や相手を許す心も育ちます。
 そして、語彙も増え、言葉の世界が拡がり、読書好きで読解力もつき、全てのことの、考えの基礎となり人間性豊かに成長します。また、学校での各教科の理解力が高まり、勉強のできる子になります。

絵本の買い方選び方

いざ絵本を買おうとすると、たくさんの絵本があってどれを買ってあげようかと悩むことがあります。子供が小さければ小さいほど難しく感じます。私自身、わが子に初めて絵本を買ってあげた時には2時間もかかりました。今まで絵本に対して余り興味を持っていないお父さんにとっては至難の技なのです。いろいろな絵本があり過ぎるとお母さんも迷ってしまいます。そこで、絵本の買い方・選び方について触れておきます。

●全集(セット)などでのまとめ買いは疑問です

「子供に読ませたい絵本50選」とか、「〇〇の選んだ絵本100冊」とかセットにしたものや絵本全集等、何十万円もするものを売っていますが、余り感心しません。セットになっている本の一冊ずつの定価を足すと確かに割安にはなっていますが、売れない本との抱き合せをしてある場合が多いように思います。一度にまとめて買うことは、その子の興味とは関係無く、どっさりとありますから、興味や感動を与えません。
それよりも、その時その時の気持ちや時期、季節や環境を大切にして一冊ずつを選びながら買うことの方がずっと素敵です。なぜなら、今現在の子供の事を一番良く知っているのはその子の親だからです。そして、一冊ずつ買ってもらう度に、喜び感動しますから、嬉しさを何回も味わうことができます。プレゼントやおみやげは、おもちゃでなく、絵本が最適です。

●絵本を手にとって自分で読んで見てから選んでください

この話は知っているからと、表紙だけ見て買うのではなく、実際読んでからにしてください。読んでみて、自分で感じるものがある絵本を選びましょう。心に響きがあるもの、ユーモアのあるもの、文がきれいでリズミカルなもの等がポイントになります。

また、絵にも感じるものがあることが大切です。名作シリーズ(しらゆきひめ・小公女・みにくいあひるのこ等)のダイジェスト版はあらすじだけですから原作者の意図は伝わりません。また、同じ題名でも何種類もあります。読み比べてください。原作は狼に食べられるのに「狼と仲良く暮らしました」とか、子供に媚びたハッピーエンドものも感動を失います。怖い話をドキドキしながら心の中で葛藤して聞くことは、感情を自制できるようになるためにも大切なことなのです。簡単には、〇〇作〇〇文〇〇絵と明記してあるのを選んでください。

再話(昔話や伝説をもとに絵本にしたもの)の場合でも、その絵本の作者自身の主張が感じられるものが良いと思います。いずれにしても、毎日絵本を読んであげているうちに、良い絵本が選べるようになります。

良い文とは

●子供が入っていける世界の文であって欲しい。

子供達は、読みきかせする言葉を手掛かりとして、又は絵を手掛かりとして、もう一つの世界に入り込んでいきます。しかも、聞き手(子供)と絵本の主人公が一体化して、自分が主人公の気持ちとなって聞き入っています。ハラハラドキドキしたり、悲しんだり、楽しんだり、一緒に食べたり、冒険したりしています。そして、やがて本を閉じて現実に戻っていきます。そういう本文であって欲しいのです。


絵本で大切なのは、その中に盛り込まれている知識や情報の多さではなく、言葉そのものなのです。そのためには、より文学的で詩的な言葉、耳から聞いて本当に分かりやすく、楽しくユーモアがあり、リズミカルで美しい文章の絵本が良い絵本ということになります。そういう絵本を選ぶのには、お父さんやお母さんの感性をより豊かなものにしなければなりません。そのためには、お父さんお母さんが絵本を楽しみながら数多く読んでみることが必要となります。仕方なしに読んであげているという気持ちをすてて、子供と幸せで素敵な時間を過ごしているのだと思ってください。

●ストーリー性があることが大事です。

前のページと関係なく突然に話が変わる(あるいは途中を省略してある)のは子供が困惑するだけです。前ページとのかかわりが大事となります。そして、作者自身がちゃんとテーマを持って、作者自身の言葉で書いている本、子供の世界を子供の発想で描いている本、幼児の生活に共通する事柄の本は子供に共感を与えます。「あっ、ボク(わたし)の世界だ」と本の中に深く入っていきます。このような本は子供の発想力を刺激して、その働きを活発にします。

●「おおきなかぶ」(福音館)で具体的に説明します。

「おばあさんは まごを よんできました」「うんとこしょ  どっこいしょ」「まだ まだ かぶは ぬけません うんとこしょ」と、繰り返しながら、だんだんと人数が増えてきます。

リズミカルな文で次のページでは誰が加わるかと期待を持たせます。そして、登場してくるのは子供達にも身近なものばかりです。最後はねずみが加わって「やっとかぶはぬけました」で、ホッとします。ユーモアもあり期待も持たせます。子供達の身近な世界で、この簡単でリズミカルな言葉、この楽しさが子供を本のとりこにするのです。

子供達は身近な動物や食べ物、乗り物の登場する本、ちょっと怖いけど覗いて見たい、現実と空想の世界の交差するおとぎ話、そんな本が大好きです。

良い絵とは・・・・

●良い絵とは

子供達に絵本を読んでやりますと、不思議なくらい静かにして、絵を見ながら聞き入っています。耳から言葉を聞きながら、自分の知識や経験を基に、イメージを膨らませているのです。しかし、生活経験の少ない子供達にとっては、イメージを膨らませるにも限界があります。そこで、絵が大きな役割をしてくれるのです。子供達は、絵を手掛かりにして、言葉からくるイメージをより膨らませて聞いているのです。だからこそ、絵本にジーッと見入っているのです。絵本の絵は、子供達の、十分に発達していない想像力と、少ない経験や知識を補いながら、イメージをより豊かなものにしてくれているのです。

そのことは、絵の質によって、子供達の描くイメージの質が変わってくるということがいえます。
だからこそ、「良い絵」であることが大切なのです。良い絵とは「物語の世界をとても豊かに語っている」あるいは、「物語を本当に描ききっている」かどうかということになります。それは、鑑賞するための絵でもありませんし、文の説明のための絵でもありません。物語の本質を捉えた絵であり、子供によりイメージを膨らませる余地を残した絵ということになります。その絵に、たとえ色が無くても、物語を十分に伝え、色やお話の世界を想像させるものであって欲しいのです。そして、次のページにイメージをつなげるものや最後のページで物語の余韻を残してくれる絵も良い絵としての大切な要素となります。


具体的に、どの絵が良いということは難しいので、前にも記しましたように、〇〇文・〇〇絵と作者がはっきりと書いてあることが、選ぶときの最低の条件といえましょう。作者の主張が感じられる絵です。

●悪い絵とは

これが「良い絵」と具体的に説明するのが難しいので、逆説的に、悪い絵の絵本とはどんなものかを記しておきます。
*かわいらしい絵
・誰が描いても、どんな話でも同じ子供の絵
・わざとらしく造られたかわいらしい絵
・形があっても生命を感じない絵
・ベタベタと子供に媚びた絵(幼稚っぽい・かわいいだけ)
・職人的・技巧に走った絵(物語と無関係・ペンキで描いた感じの絵)

絵本のある生活

お家ではどのような絵本との関わり方をされているのでしょうか。毎日読んでやっていますか。今日は忙しいからとやめないでください。忙しくてイライラしていても、ぐっと心を落ち着かせて必ず毎日読んでやってください。

●日常の会話

お父さんお母さんが子供と会話する時間は一日どのくらいなのでしょう。一度計算してみてください。きっと、予想以上に少ないことに驚かれることでしょう。しかも、ゆっくり話し合ったりすることよりも、指示したり禁止したりする言葉が意外と多いことに気付かれることと思います。そして、テレビをつけたままの食事は家族団らんの時間も奪います。日常の会話が粗末になってきているといえます。しばらくの間、テレビの無い生活をしてみてください。嘘のように家族での会話が戻ってきます。
子供達は家族での会話の中から生き方を学んでいきます。親子の会話が豊富なほど、しっかりとした考えを持つようになります。

●豊かな言葉の体験

たとえ、日常の会話が少なくても、絵本のある生活は言葉の生活をとても豊かにしてくれます。
お父さんやお母さんが子供達に絵本を読んであげます。しかも、その言葉は、作者の選び抜いた素敵な言葉であり、詩的でリズミカルな言葉なのです。そのことは、ただ読んであげているというのではなく、子供にとっては、お父さんお母さんの口から出てくる、お父さんお母さんの言葉なのです。日常会話が少々貧弱であっても、絵本を読んであげている時は、子供達はとても豊かな言葉の生活を体験しているのです。

●親子の絆(きずな)

お家ではどなたが読んであげていますか。子供達は、膝に抱かれて、あるいは添い寝をしてもらいながら読んでもらっているとき、最高に幸せな気持ちで聞き入っています。親の愛をしっかりと感じているのです。愛を感じて育った子は、人を愛する心やいたわりや慈しみのある子へと育ちます。親子の絆もしっかりとできていきます。


親子の絆がしっかり形成され、心の安定した生活が基礎となって、子供達の自立心や自主性、意欲が育まれ大きく成長できるのです。人間関係もしっかりしてきて社会性も育つのです。
日頃、子供と接することの少ないお父さんほど、絵本を読んであげてください。毎日です。