葉子先生の部屋

おとうさんはスーパーマン!(平成18年度6月)

今年のゴールデンウィーク、皆さんどのように過ごされましたか?休みに入る前の子供達も色々な計画を話して聞かせてくれました。旅行をする話や、遊園地に行く話……。ある年少組の子は、お休みする間の幼稚園のことを気にしてか、「ねえ、ようこせんせい、ぼくね、船に乗っておばあちゃんの所に行くから、帰って来るまで、幼稚園はお休みにしててくれる?」とか、一人の子の話を聞いていると、ぼくも!私も!と、どんどん聞かせてくれました。G.W明けの子供達のお土産話が楽しみでした。


そして、我が家はというと、農繁期真っ只中!G.Wは、毎年田植えに大忙しです。遊びに行けるかどうかは、そのはかどり具合によるのです。義母が亡くなった5年前から見様見真似で私も田んぼの泥と悪戦苦闘しています。ついでに言わせてもらえば、5月5日子供の日は、私達夫婦の結婚記念日。(祝日だから毎年記念日を祝えるわ~?)とその日を選んだのは……誤算でした。(アハハ)そんな家の状況がわかってきたのか、諦めてか、我が家の子供達は「どこかへ連れてって!」とも「ゴールデンウィークは何するの?」とも聞かなくなってしまいました。最近になると、自分達も裸足で田植えをする事を楽しむようになりました。


今年も絶好の田植え日和。当たり前の様に田植え仕度をして田んぼに向かう義父と主人……その後、自分を奮い立たせるように身支度をして気合いを入れて向かう私と子供達(特に私…)。苗箱を運んだり、田んぼの水を調節したりetc.植えるまでにする事がたくさんあります。その間、実際田植え機に乗って田植えをする主人は、じーっと田んぼを見つめています。子供達が「お父さん!何してるの?」と聞くと、義父が「どう植えたら能率よく、しかもきれいに植えられるかを考えているんだろうね。きれいに植えてないと、稲刈りの時に困る事になるからね。お父さんは、几帳面だからね。」と説明してくれました。「お父さん真剣な顔!すごーい。」と子供達も私も納得。田植え機に乗って田んぼを行ったり来たりするお父さんを子供達は、じーっと見ていました。

途中で田植え機のガソリンがなくなると、おじいちゃんが1斗缶と50センチほどのホースを持って来てホースの一端を缶の中に、もう一端を口にくわえ、ガソリンを吸い上げます。そして素早く田植え機のタンクに……。子供達は目をまんまるくして流れ出るガソリンを見ていました。「おじいちゃん、すっごーい!!」。また、田植えの途中、突然の大蛇侵入!これにも怯まないおじいちゃん、平然とその大蛇を追い払う――。

効率よく田植え機を使うお父さんや、ホースからガソリンを吸い上げたり、大蛇を追い払うワイルドなおじいちゃんのその姿は子供達の目にスーパーマンの如く映ったようでした。「おじいちゃんはすごい!お父さんはすごい!」の連発でした。その頃、派手に作業をする義父や主人の傍らで地味に田直し(植え残された所に手植えをする作業)をする私にはこんな言葉をかけてくれました。「腰をかがめて手で植えるお母さんの方がしんどそうね。」―――本当なら「そうそう!その通り!お母さんしんどいよ~」と言いたいところでしたが、ここは、100歩譲って(笑)「そんなことないよ、おじいちゃんとお父さんは頭脳プレーもしてるもん。お母さんなんかより、ずっと大変よね。」と、おじいちゃんとお父さんを持ち上げました。家族総出の作業の中で、改めておじいちゃんやお父さんのすごさを知ってくれたようでした。田植えが終わったその夜は、ビールや着替えを用意してくれたりして、子供達は心なしか優しかったようです。


『尊敬』の気持ちが『いたわり』になり、『目標』や『憧れ』の像にもなります。そして尊敬する人からの忠告や注意も素直に受け入れようと思えるようになるのです。お父さんやお母さんの、頑張っている姿をどんどん見せてあげてください。お父さんやお母さんでないと出来ない事をどんどんして見せてあげてください。それまで何となく感じていた『お父さんってすごい!お母さんってすごい!』の気持ちに子供達は確信を持つはずです。


この前、帰りのバスの中での事、一人の子が、ふたを触っている間に見事に分解してしまい元通りにならなくなった水筒を持って困っていました。友達が直してあげようと、あれこれしてくれますが、直りません。ついに諦めて、その子は「いいよ。お父さんに直してもらうから。ぼくのお父さんは、何でも直せるから。機械だっておもちゃだって、すぐに直してくれるよ。すごいんよ。」と自慢までし始めました。お父さんやお母さんは子供にとってスーパーマンなのです。自慢しているその子を見て、家族のいい関係が垣間見えるようで微笑ましく思いました。


田植えが終わったその日の夕食では、主人と義父が「あー、おなかいっぱい!やっぱり、お母さんのごちそうは、おいしいね。」と言ってくれ、その一言で、やっと私も子供達からの尊敬の眼差しを浴びる事が出来ました。おまけに「お母さん、田植えをよくがんばったね。」と誉めてくれました。へっぴり腰……見破られてたか(^_^;)。

私流(平成18年度5月)

こんにちは。田房葉子です。この度、10年に渡り、続いてきた“白髪せんせいのつぶやき”を引き継ぐことになりました。人にものを頼まれるとイヤ!と言えないこの性格。できるできないをあまり深くも考えず、「ホイホイ」と引き受ける。引き受けた後で、てんてこ舞いして苦しみもがく……。昔から、こんな私を両親は、『お人好し!』だと言っていました。私のその性格を知ってか知らずか、昨年度3月の園だよりでの理事長による“つぶやき引退宣言”と後任者任命……。理事長先生の足元にも及ばない人生経験と知識・教養。その後を引継ぐ事は、まだまだ未熟な私にとってあまりにも大役すぎて……と、かなりプレシャーを感じつつも、昔からの(困った)性格が手伝って、またまた引き受けてしまいました。こうなったからには、気持ちの切り替えが早いのも私……。それからというもの、私の頭の中には、何を書こうかと伝えたい色々なメッセージが駆け巡るのです。単純な性格も、なかなかいいものです(苦笑)。


『幼稚園の先生』と呼ばれるようになって早24年、これまでに出会ったたくさんの子供達と保護者の方、そして生きてきた年月の中で、私が私なりに考えている事、私の目に見えるもの、心に感じるものをこのコーナーで語らせていただけることを逆にありがたいと思って、これから書いていこうと思います。


私は、人と語り合うことが大好きです。実は、このコーナーを『葉子せんせいの部屋』に決めたのは、某テレビ局の長寿番組『徹子の部屋』……あの番組でのトークがとても好きで、黒柳徹子さんが持ち前の好奇心で、ゲストと対談される姿は実に見事だと憧れているからです。話し上手・聞き上手・のせ上手……あのヨン様?も出演し、黒柳徹子さんとこの番組で対談できた事を大変喜んでおられたとか……。人と人とのつながりは、いろいろな方法で深まっていくと思います。


会話であったり、文面でのやりとりであったり、あるいは、触れ合いであったり、それは、相手を理解して世界を拡げる入り口であると思うのです。知ろうとする事、知ってもらおうとする事がもっと楽な気持ちでできたら、人と人はもっとつながっていくような気がします。私は、この『葉子せんせいの部屋』をたくさんの保護者の方に読んでいただき、皆さんと一緒に、子育てについて・幼稚園について・世の中について(ちょっと大きすぎ?)などなど、いろいろな事をおしゃべりしていきたいし、心と心のキャッチボールをしていきたいと思っています。ぜひ、ご意見ご感想をお聞かせください。一つひとつのご意見ご感想にお返事させていただきたいと思っています。


さてさて、その第1回目、自己紹介をしておきましょう。商家に生まれ、幼き頃から幼稚園の先生に憧れ、家業を継いでほしいという両親の想いを横目に、大阪の短大へ入学。大阪で家賃15,000円のおんぼろアパートで(夢のはずだった)一人暮らし。苦学の甲斐あり、卒業後は、京都の幼稚園に就職し3年間働く。夢と現実とのギャップと都会暮らしに疲れ、結婚を決め帰郷。それでも、子供達に囲まれた生活の夢をあきらめきれずにいたところ、縁あって、ここ三次中央幼稚園に就職。現在21年目、まだまだこれからである。

12年前に三次中央幼稚園での保育実践記録『あそべやあそべ』を出版(第2弾を!と思いながらも実現しない)。就職1年目にして、結婚。商家から農家へ嫁ぐ。大変な環境の違いに戸惑いながらも、やっと最近、山・田畑に囲まれた生活の贅沢さと豊かさを実感し始めた。(年をとったせいでしょうか?)

現在、小学校6年生と4年生の娘2児の母である。4年前より、三次中央幼稚園の主任となり、小振りな身体をフル回転させながら楽しく愉快にがんばっている(つもりの)日々である。……と、このぐらいにしておきます。今後、登場する話題の中で、このプロフィールと照らし合わせながら、内容をより深く読み取っていただければ嬉しいです。


さて、理事長先生の“つぶやき引退宣言”からここまで、何人もの方から「今度は、葉子先生が書かれるそうですね。楽しみにしていますよ。」と声をかけていただきました。関心を寄せていただいていることを知り嬉しく思っています。そんな方々に「あーら、今回はただの自己紹介?!」と、がっかりさせていないかと少々心配です。でも、まずは、知ろうとする・知ってもらおうとする体制を整えたいのです。書いている私の気持ちをよりよく皆さんに伝えるためには、どのような者がどのような背景で書いているのかをも知って読んでもらいたいと思っています。これが、私流です。


“私流”といえば……、結婚して間もない頃のこと、田舎の本家の嫁として嫁いだ核家族育ちの私は、当時大変緊張していました。いい妻になる前に、いい嫁でなくてはならないと……。今思えば、全然堅苦しい家ではないのに、結婚前に私の両親があれこれ心配するものですから、私が勝手につくってしまった“お嫁さん像”に近づかなきゃと必死だったのだと思います(こんな事を思って可愛かったのも最初の頃だけで、日に日に図々しくなってきましたが…アハハ)。

そんな中、ある日、お花を生けて床の間に飾り手直ししていたところ、今は亡き義母に、「葉子さん、何流?」と聞かれました。それを聞かれた瞬間、しまった!私ってなんて無謀者!と床の間に飾ったことを後悔したのです。しかし、何とか答えないと……と、とっさに口から出た答えが……「はい、“私流”です!」それを聞いて義母は、プッとふき出し二人で大笑いしました。それから、後々まで、この話は義母によって、「うちのお嫁さんはおもしろい」と、近所の話題にされ、その事は、私が家や近所に馴染むきっかけになったのです。


そう、私流に私流に-。人は皆、持って生まれた“その人らしさ”いわゆる“持ち味”があります。私は私よ!と傲慢になり、社会性に欠けるものでは困りますが、無理して自分を取り繕ったり背伸びすることはないと思うのです。むしろ、“自分らしさ”を持った上で、語ったり、他の環境を取り入れたり、他者の意見を聞くほうが、素直に生きて行けるような気がします。


これから私も、理事長先生から引き継ぐプレッシャーに負けることなく、私流に楽しく書き続け、“私らしさ”あふれるコーナーにしたいと思っています。そして、毎回、次回を楽しみにしていただける『葉子せんせいの部屋』を保護者の皆さんと一緒につくっていきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
次回をお楽しみに。