見守る喜びをかみしめる(平成27年度6月)

幼稚園の花壇のアジサイが間もなくピンクや水色、紫に色づきます。夏の季節を迎えるまでのこの時季を春とは違う花が私達の目を楽しませてくれます。幼稚園では、来週からプールあそびが始まります。プールあそびをはじめ、心も身体も薄着になり幼稚園ならではの開放感をたっぷり味わえるあそびをたくさん経験させたいと思います。

さて、先週行った参観日では、お子さんの幼稚園での生活ぶりを楽しくご覧いただけたでしょうか?進級児のお家の方々は、昨年からの成長を感じてくださったり感心してくださったり新たな発見があったりして、関心深く観ていただけた事でしょう。また、新入児の保護者の方々は、お子さんよりもお家の方のほうが緊張しながらの参観だったかもしれませんね。お家では見られないお子さんの様子を微笑ましくご覧になっておられた姿が保育室全体をほのぼのとさせていました。

子供の成長をこの目でいつも確かめたいと思う親心は深い愛情のひとつです。これまで必死に育ててきた数年間の事を思い浮かべながら、成長を目の当たりにして喜びをかみしめるのです。どんな小さな成長も、親にとっては大きな喜びなのです。

先日、園長先生が「こんなラブレターをもらったのよ。」と私に一通の手紙を読ませてくださいました。それは、園長先生が、30年以上も前に担任をし、現在は三次市内の病院に看護師として勤める女の子からの手紙でした。そこに通院中の園長先生と再会し、しばらくして届いたものでした。園長先生は、まさかそこに勤務しているとは知らずの通院でしたが、その子は、園長先生に初診の日から気が付いていたようで、2度目の診察日に声をかけてくれたのだそうです。その時の事が手紙につづられていました。『初日に来院された時、私は、先生の書かれた問診票を見てすぐに先生だとわかりました。昔のまんまのかわいらしい文字にピンときました。昔いただいたお手紙やれんらく帳に書かれていた文字そのものでした。待合室を見渡して、先生を見つけ声をかけました。私の中の昔のままの先生で、懐かしく嬉しかったです。』……と。又『ずっと、会いたかった』…と。それから、その頃の思い出がたくさん書かれていました。先生の顔を一生懸命絵に描いた事や厳しく叱られ、友達に謝る事ができるまで先生に見守ってもらっていた事等、そして、結婚をして子供が生まれたという報告も…。その手紙に目を細めて何度も読み返す園長先生の横顔がとても幸せそうに見えました。そんな手紙をもらったことは勿論ですが、ずっと前に卒園した子が、こんなにも鮮明に自分の事…自分の文字まで覚えていてくれていた事や再会までの彼女の日々が幸せだった事を知り、大きな喜びを感じられたのだと思います。そして、実際に働く教え子の立派な姿に感動されたでしょう。

また先日、私の教え子が銀行の出張店舗窓口にいる事を知り、サプライズのつもりで働く姿を見に行きました。こっそりと様子をみると、お年寄りに笑顔で丁寧に通帳の説明をしている彼女のその姿はとても眩しいものでした。卒園児が、どこかで働いていると聞けば、行って見てみたいと思うし、結婚や出産のニュースを耳にすれば、「おめでとう」と声をかけたくなります。遠い所にいた子が三次に帰って来たと知れば「おかえり」と迎えてやりたいとも思います。悩んでいる、挫折を味わっていると知れば、助けてやりたい!できる事はないかと手段をさがします。卒園して見えていなかった空白の数年も、先生とその子達の間は、『思い出』で結ばれていると思っています。もはや、そこには、先生と園児との関係を超えて、お母さんの気持ちに近くなっているかもしれません。もちろん母親の気持ちとは到底同じもののはずはありませんが、子供の成長をいつまでも見守り、いつかは、この目でその成長ぶりを…幸せな姿を見たいという気持ちは教え子を思う親心です。何十年経っていても、私達は、会いたいと願っているし、祈っています。また、子供達も、先生を想い、再会をきっかけに幼稚園の頃を思い出して喜んでくれる事でその頃に育んだ愛情がその子の成長の一部分になってきたのだという事を感じると、ほんの少し誇らしくなるのです。そして、久しぶりに見る教え子の成長を喜ぶ私達の気持ち以上に、一年一年の…一日一日の…一瞬一瞬の子供の成長を一番近くで見守る事ができて、その時々に手をたたいて喜ぶ事ができる親の幸せははるかに大きいに違いありません。

私達大人はその喜びをかみしめながら子供達を見つめて行きたいものです。そして、子供達もまた、近くで見守ってくれる人、遠くで祈ってくれる人、今の成長を喜ぶ家族、遠い先の成長を期待してくれる人にいつでもどこでも、愛情に包まれながら生きていくのです。その人たちに、ほめられたり一緒に喜んでもらったりする事で、子供は、その愛情をしっかり感じながら、安心して成長できるのです。

そういえば、私のすぐそばにも可愛い教え子達がいるのでした。まさか同僚になろうとは……。三次中央幼稚園の先生として、日々、一生懸命に頑張り、成長しているその子達の姿を頼もしく見守る日々です。