昔 話(むかしばなし)

イソップ物語、アンデルセン童話、グリム童話や日本昔話とたくさんの昔話がありますが、お父さんお母さんにもなじみの深いお話がずいぶんとあるのではと思います。その内容は、愉快なお話、冒険のお話、不思議なお話、怖いお話、かわいそうなお話、行事をめぐるお話と様々です。
昔話の語り伝えられた時代は、ヨーロッパでも日本でも中世封建社会の中で、一般民衆は常にしいたげられ虫ケラのように踏みにじられた時代です。また、自然災害による食糧飢饉など苦しい生活の中から生まれたものがほとんどです。そこに、「ももたろう」や「八郎」のような英雄伝説が生まれ、それは民衆の憧れであり、いつかは自分たちを救ってくれるという切ない願いでもあったのです。もともと民衆の中で生まれ語り継がれてきたことを大切にしたいものです。

●「おはなし」

絵本は文と絵がお互いに関わりあって、子供達の理解を深めイメージを膨らませてくれますが、絵のない「おはなし」の手掛かりは言葉だけです。そのため、ある程度の生活経験と知識がないと理解できませんが、子供はそれなりに理解してくれます。言葉を手掛かりに自分の知識をフル回転させてイメージを膨らせます。すごい想像力です。

「こわいおはなし」 

昔話の中には怖いお話がたくさんあります。私も、二人の娘を両脇に抱えてベッドに横になり、怖いお話をよく読んでやりました。鳥取県の伝説で、「ものいう布団」というのがあります。鳥取の町の小さな宿屋でお客が眠っていると、「あにさん寒かろ」「おまえ寒かろ」と、布団の中からささやくような声がするのです。お客は怖くて部屋を飛び出すのです。不幸な兄弟をめぐる因縁話です。幼い兄弟が、たった一枚の布団を譲り合いながら、寒さとひもじさで抱き合ったまま凍死する姿に思わずほろりとさせられるお話で、のろいの怖さより、貧しい人間の悲しみを伝える伝説です。「あにさん寒かろ」「おまえ寒かろ」と、悲しそうな声で読んでやると、二人の娘はしがみついてくるのです。それでも、また、つぎの日に読むよう要求するのです。「置いとけ堀」などの怪談も怖いお話ですが、しがみつきながら聞いている情景は、親子共々、今でもはっきり覚えています。

前にも書きましたが、怖いお話をドキドキハラハラと心の中で葛藤しながら聞くことは、感情の自制ができるようになるためにも大切な経験なのです。そして、いつかお話を思い出したとき、お父さんやお母さんに読んでもらったときの情景も一緒に思いだすのです。親子の強い絆です