興味と好奇心(平成10年度)6月

子供たちが夢中になって何かをしている姿をたびたび目にされることと思います。そのような、わが子の夢中になっている姿を、お母さんやお父さんはどのように感じて見ていらっしゃいますか。きっと、微笑ましい姿として見守っておられることと思います。そうなんです。「子供らしさ」の一番表れるのが、この「夢中」になっているときなのです。


それは、子供たちは「今」を生きているからこそ、「今」、一番興味を持っていることに夢中になって遊ぶのです。「今」を生きるということは、大人のように、このことをしたら将来役に立つとか得になるというような効果意識を持ちません。「今」、興味を持っていることだからこそ、そのこと自体が楽しいからこそ、夢中になってしているのです。子供たちの「純粋無垢」の姿は、この効果意識のない、楽しさの中に没頭している様子の中に表れ、私たち大人はその姿に子供らしさ、その子(自分)らしさを感じることが出来るのです。それが、子供の健康な姿なのです。


子供たちが何かに夢中になる根底には確かなる好奇心があります。その好奇心があるからこそ、いろいろなことに興味を示し、夢中になって遊ぶのです。その中でいろいろな発見や驚き、感動を味わう場面に度々出合い、喜びとなります。また、逆に困難やトラブルにも遭遇します。しかし、自ら興味を持ってしていることですから、困難や挫折感をも乗り越え、自分で問題を解決していきます。遊びをもっとおもしろくしていくには、もっと知りたくなり、探索したり確かめたりします。科学する心や意欲につながるのです。遊びをより楽しくするため、友達との関わり方にも磨きが入ってきます。思いやりやいたわりの気持ちと共に仲間意識が育まれ、社会性が発達してきます。子供の「遊び」が大切ということはここにあるのです。


これを書いている今も、子供たちは小川に入って水遊びに夢中になって遊んでいます。牛乳パックや発砲スチロ-ルで船を作って浮かべて遊んでいる子もいます。木陰でかたいかたい泥団子を賢明に作ってる子や、砂場やアスレチックで遊んでいる子もいます。葉っぱや砂を使ってままごとをしている子もいれば、ミミズや虫探しに賢明になっている子もいます。幼稚園に遊びに来た育児サ-クルの小さい子の手を引いて一緒に遊んでやっている子もいます。花壇の花に水をやっている子や動物に餌をやっている子もいます。子供たちは、幼稚園という環境の中で、それぞれが、自分の興味に合った遊びを思い思いにしています。この自分に合った思い思いの遊びこそが、自分の意志で、自分で判断し、友達と関わりを持ちながらしている自発活動なのです。この自発活動こそが、子供自身の主体的な生活を送るために重要な役割を果たすのです。


子供たちは、成長と共に自立していかなければなりません。何時も大人から指示されたり命令され、「させられている」生活からは、子供の主体的な生活は生まれてきません。子供に「任せる」時間と余裕を持ちたいものです。


ところが、わが子となるとどうしても急いでしまいがちです。「早く出来るように」、「早く覚えるように」と、何でも「早く早く」、あるいは「先に先に」と教えこんだり習わせたりしようとする姿も見られます。このことは、子供が好奇心や興味を抱く前に教えてしまったり習わせたりしますから、感動や喜びを伴いません。逆に、嫌いになってしまい、肝心なときになって拒否反応すら示します。大切なことは、子供が好奇心や興味を持って夢中になれる環境(自然、仲間、地域社会、家庭、絵本等々)と、その時間と空間を保証してやることです。それは、親自身が子育てに余裕を持ち、広い心で見守り、子供のしていることを楽しむことです。そうしていると、興味を持って来たときをうまく捕らえることも出来るし、知りたがっていることを考えさせたり、少しだけ教えることにより、もっともっと興味を深めることになります。


この幼児期に、様々の経験、自ら関わる具体的で直接的な経験こそが、子供の自己教育力の基礎と主体的生活の能力基盤を培うのです。幼児期の子供の生活の在り様が、これからの育ちの中で、とても重要な役割を果たすのです。