カモの赤ちゃんと象さん(平成13年度)9月
昨年の夏休みはプールの新設工事や園庭整備工事等で夏が過ぎましたが、今年も夏休みの間中、幼稚園舎の改装工事でした。
保育室の壁や天井を塗り替え、掲示板になっている壁も張り替えました。周りがきれいになると、黒板や床の汚れが目につきだして、これも早いうちにきれいにしなくてはと思っています。
トイレも全面改装をして、床も便器も全部やり替えました。今までは洋式便器が一個だけでしたが、今度はすべて洋式便器で、便器もドアもカラフルで明るい素敵なトイレになりました。
テラスにあった下駄箱も取り払い、新しく保育室の壁側に付けたので、開放感のある広いテラスとなりました。階段も手すりを木製に取り替え床もきれいになりました。
1学期の終わりに平屋園舎の取り壊しによって湯沸室がなくなっていたので、これも新築しました。そして、園舎の壁も塗り替えて、ピンクとブルーのコントラストの明るい園舎に変身です。
園庭の砂場も新しく作り替え、移設していた樹木の植え替えも済ませました。夏休みが終わって、園児が登園して来たときに、リニューアルした幼稚園を見て、どのような反応を見せてくれるかを楽しみにしながら、異常に暑かった夏休みを、元気に過ごすことができました。
夏休みの間もプレイルームの子供たちは毎日元気に登園してきて、毎日のようにプールあそびやセミ捕りをしながら、幼稚園がどんどんきれいになっていくのを楽しみに見守ってくれていました。
そんなある日、お当番さんの4人の子供たちが事務所に「牛乳をください」と、取りに来ました。その中の1人、年中組の女の子のYちゃんが、「私、牛乳は飲まないの」と言うので、「牛乳をいっぱい飲んだら大きくなれるよ」と言うと、Yちゃんはすかさず、「大きくならなくていいの。小さい方がかわいいの。カモの赤ちゃんだって小さくてかわいいでしょ」と、すまし顔で言っています。カモの赤ちゃんが産まれたとき、本当にかわいかったのです。園児も先生もお母さん達も、小さなカモの赤ちゃんを見ては、「かわいい!かわいい!」と言っていたので、自分も「かわいい」と言われるには、小さい方が良いのだと、そう思っていたのかもしれません。そんなカモもすっかり大きくなり、所狭しと池の中を泳いでいます。
今年も大学院の寮生活で一緒だった友だちの家族がお盆前に泊まりに来てくれました。その時に産まれた女の子が、もう3歳になって、鹿児島県内の幼稚園年少組に通っています。この子は、「大きくなったら、何になりたい?」と聞かれると、「ぞうさん!」と応えます。お母さんに似て小柄な子なのですが、周りの大人から、「いっぱい食べたら大きくなれるよ」と度々言われているらしく、大きいことが良いことだと思っているようです。
このように、大人の何気ない言葉でも、しっかりと聴いているし、真面目に受け止めています。このような大人の語りかけの中からも、自分自身(自己)を捉えているのです。
それだけに、逆に、からかい半分のような言葉かけや、テレビ等の低次元の娯楽番組でのふざけたような下品な言葉や行為は、子供自身の理解の範囲を超え、少しずつ自我(自己意識)を形成しつつある幼児にとって、精神的な混乱を招きます。
話は専門的になりますが、心理学の中で、ホスピタリズム(施設病)という用語があります。これは、乳児院、養護施設、病院等に家庭から離れて長期間養育された子供に見られる病状ですが、原因は母性刺激の欠如、母子分離、多数母親制等に由来すると言われており、その症状は身体発達遅滞、知的発達遅滞、情緒障害、対人関係の障害等です。このような施設では、今はずいぶんと改善されてきて良くなってきていますが、昔のように、人数の少ない人的環境に恵まれていない施設でよく見られた病状ですが、近年の実の母親や義父による乳幼児の殺害や児童虐待等の様々な痛ましい事件を耳にする度に、母親と家にいても母性刺激の不足や母子分離の状態が多くあるのではないかと思います。
いじめも、母性刺激の欠如から来る対人関係の障害なのかもしれません。我が子に虐待行為をする親や厳しすぎる親は、自分も虐待を受けて育てられたり、厳しく育てられすぎて、親の愛情を感じないで育った人の場合が多いと言われます。自分が虐待を受けて育ったから、厳しく育てられたから、我が子だけは愛情いっぱいに育てようと思っていても、愛されて育った経験がないので、どのように育てて良いのかわからなくなるのだと思います。ちゃんと育てようとしていても、あるいは、しようとすればするほど、いつの間にか虐待に近い子育てになっているのです。
幸い、我が園の保護者のみなさんは、本当に愛情いっぱいに、ほほえましく楽しい家庭を築いていらっしゃると信じています。そのことは、お子さんの天真爛漫な姿や子供たちの会話の中からも、しっかりと感じ取ることができます。だからこそ、みんな仲良しです。友だち同士のかかわりあいの深さもすばらしいものがあります。
周りの大人の豊かな言葉かけや親子の会話、絵本を読んでもらったり昔話を聴かされて育った子は、しっかりと親の愛情を受け止めて育ってくれます。親子とも人生で一番幸せなときなのです。たとえ育児が大変であっても、心の持ち方次第なのです
2001年9月4日 4:15 PM | カテゴリー:白髪せんせいのつぶやき | 投稿者名:ad-mcolumn