目玉焼き(平成14年度)平成15年2月

1月27日の雨の日、3歳未満児クラスのさつき組の子供たち5人が、ホットケーキを焼いて、「じじちょう(理事長)先生も食べてください」と、自分たちで焼いたホットケーキを事務室に持ってきてくれていました。ホットケーキの上にはバナナやイチゴがのせてあって、とてもかわいらしく出来ていました。先生と一緒に作った楽しい様子が目に浮かぶようでした。そのホットケーキを食べた後、さつき組に行って、とても美味しかったことを話して、「ありがとう」と言いました。すると、「目玉焼きもしたよ」と言います。すかさず担任が、「そう、すごいんです。焼くことよりも玉子を割るほうがおもしろくて、何個でも割ろうとして、止めるのに大変だったんです」と言います。


「そうなんだよ。つい先日、モネちゃんモカちゃんも、カモの玉子で同じことをしたんだよ。そのときも、焼くよりも割ることのほうをしたくて、結局、3個ずつ割らして、目玉焼きを作ったんだよ」と担任に話すと、「え~、カモの玉子で目玉焼きしたんだって!」と、子供たちに伝えます。「そうだよ、今度はみんなにもカモの玉子を持ってきてあげるから、また、目玉焼きをしようね」と約束をして部屋を出ました。


実は、2歳児のモネ(萌音)ちゃんと4歳児のモカ(萌歌)ちゃんは、先日の参観日に来てもらった講師の上白石孝子先生のお子さんで、1月の「つぶやき」で書いた『孫』に出てくる二人の女の子です。参観日の前日、その子たちと幼稚園の園庭で遊んでいるときに、カモの小屋に玉子があるのを見つけて、「玉子がある!」と喜んでいるので、「そう、この玉子からカモの赤ちゃんが生まれたんだよ」と話してやりました。


家に帰って、早速、冷蔵庫に保管してあるカモの玉子を取り出してやりました。「これもカモの玉子だよ。目玉焼きにして食べると、とても美味しいんだよ。目玉焼きをつくろう!割ってごらん」と言うと、「割る!! 割る!!」と言って、大喜びで割り始めます。しかし、カモの玉子の殻は結構硬いので、なかなかうまくは割れません。割れ目を入れるのを子供の手を持って一緒に割ります。でも、手伝うことに満足しない二人は、「もう1個」と要求します。もう1個ずつ渡して、今度は自分たちだけで割ろうとしますが、「グシャ」となってつぶれます。それも不満で、「もう1個」と言って、それぞれ3個目を割ります。今度はなんとか一人で割ることが出来ました。「さ~、今度は目玉焼きにしよう!」と、台所に連れて行き、フライパンで目玉焼きを一緒にしました。自分たちで作った目玉焼きです。おなかいっぱいになるまで食べたのでした。


さつき組の子供たちは、次の日、大根やネギを採りに、担任の家のおじいちゃんが作っている畑に行きました。私もその様子を見たいので、すでにバスで出かけた子供たちの後を追って行きました。畑に着くと、子供たちは「うんとこしょ!どっこいしょ!」とダイコンやカブを抜いています。カブは丸いのですぐ抜けますが、ダイコンは長いので力いっぱい引いても抜けません。何度も「うんとこしょ!どっこいしょ!」と引いても抜けないので、先生と一緒に葉っぱを持って引き抜きます。「やった~、抜けた!」と大喜びです。きっと、絵本の「おおきなかぶ」の、『それでも なかなか ぬけません』のフレーズを想像し、その重さを実感しながら抜いたことでしょう。子供たちは、抜いたダイコンを手押し車に乗せて、おじいちゃんのところまで運んで、「洗ってください」と、おじいちゃんに手伝ってもらいながら一緒に洗いました。


担任が、「明日はたこ焼きをするからネギを採りに行こう」と声をかけて、今度はネギ採りが始まりました。ネギを子供たちの手に持てるだけ引きちぎっています。それを運ぶ途中に白菜が育っていて、一把ずつワラで縛ってあり、外側の葉っぱは寒さで変色しています。担任が、「これ、何か分かる?」と聞くと、「白菜みたい」と言うので、担任は、「○○ちゃん、すごい!白菜が分かるんだ」、「じゃあ、これは?」とホウレン草を指差すと、「葉っぱ」と言って私たちを喜ばせてくれています。子供たちは、収穫したダイコンとネギに、もらったニンジンとキュウリを一緒のかごに入れ、幼稚園に持ち帰りました。


早速、子供たちは担任と一緒に、ダイコンとキュウリとニンジンを細切りにして、マヨネーズとケチャップをつけて、お弁当のときに一緒に食べ始めました。ほとんどの子が嫌いなはずのニンジンや生のダイコンを、子供たちは、お母さんの作ってくれた弁当のふたを開けるのも忘れて、夢中になって食べています。自分たちが野菜を採ってきて作ったという気持ちがそうさせているのです。
そして、明日、さつき組のクラスが、たこ焼きをするというので、たまたま、親戚からもらったばかりのタコがあったので、私は、たこ焼き用にと小さく切って担任に渡しておきました。


好奇心いっぱいの幼児期の子供たちは、なんでも自分でしたがります。台所で大好きなお母さんのしていることを自分もしたいと言います。忙しくされているお母さんには足手まといになることが度々です。こぼしたり壊したりして大変なことになると、ついつい拒否してしまいがちです。しかし、せっかく子供がしたがっているときの対応を間違えると、大きくなった頃には手伝いさえもしなくなります。忙しいときには、「今日はがまんしてね。明日、一緒に目玉焼きを作ろう」というような対応の仕方をしてやると、とても楽しみに待ってくれます。


このように子供たちは、さまざまなことを、直接、体験することでいろいろなことを感じ取り理解を深め、その楽しさが喜びとなり、満足感はまた次の意欲を持つようになります。お母さんやお父さんと一緒にすることが親の愛情を感じながらですから、なお更です。ここまで書いた時、さつき組の子供たちから、「たこ焼きが出来ましたが雪がいっぱい有って持って行かれません」と、事務室に電話があり、事務の人がもらいに行って、私のところに持ってきてくれました。『美味しい!!』。早速、子供たちの部屋に行って「すごく美味しかったよ」と喜びを伝えました。