小鳥の巣(平成17年度5月)

3月中旬に入って、三次市観光協会から、三次市の合併記念に製作して販売していた小鳥の巣箱を市内の幼稚園、保育園児全員に無料で配布されました。我が園でも全園児に配布した残りの5箱を幼稚園の自然観察園に、4月のはじめに設置しました。小鳥たちは、通常、2月から3月にかけて巣を構える場所を探し回るので、4月になってからの巣箱の設置では、もう間に合わないかと思いながら、5本の木の幹にそれぞれ設置しました。
ところが私の心配をよそに、2,3日すると、二つの巣箱にヤマガラとシジュウガラが出たり入ったりしています。もしかして巣を構えるかもしれないと、期待に胸を膨らませながら、毎日様子を窺っていました。


ちょうどその頃に、昨年の年度途中で広島に転園したこずえちゃんとそのお母さんが幼稚園を訪ねてきてくださったのです。私は留守をしていてお会いすることはできませんでしたが、なんと、私へのお土産といって、「小鳥の巣」という絵本を持ってきてくださっていたのです。しかも、新しい絵本を注文したら、1週間以上かかると本屋さんに言われ、それでは間に合わないと、こずえちゃんの持っていた「小鳥の巣」の絵本を、私に下さったのです。その日の夕方になって、職員室でこずえちゃんの担任だったあずさ先生から、こずえちゃんとお母さんが来園されたことと、「小鳥の巣」という絵本のお土産とその事情のことを聞き、その絵本を受けとりました。
次の日に、自然観察園の巣箱の様子を見ていると、一つの巣箱にシジュウガラシジュウカラが苔を一生懸命運んでいるではないですか。「やった!!」 と、舌打ちしながら、一人、喜んでいました。すぐに、こずえちゃんのお母さんに絵本のお礼とともに、シジュウガラが巣を作り始めたことをEメールで報告しました。

昨年度の「つぶやき」の中で、自然観察園が完成したことや、野鳥や小鳥の巣のことを書いたりしていましたが、こずえちゃんの在園中に、お母さんが私のところに会いにこられて、おじいちゃんが小鳥を大好で飼育しているという話や自分の子供の頃の小鳥についての思い出をいっぱい話されて帰られたことがあったのです。この度は、直接お会いできなかったことは残念でしたが、なんだか、こずえちゃんとそのお母さんが小鳥を運んできてくれたような不思議な感じがしました。
その巣箱を毎日観察しています。中が見えないので巣箱の中の様子はわかりませんが、時々、親鳥が穴からのぞいたりしていますので、営巣していることは確かです。親鳥が時々の穴からぞいたりするのを観察していると、少し離れた木陰の中にオスの親鳥が見張りをしているようで、私が近づいたりすると、「ツピー・ツピー・ツピー」と、少しかん高い声でさえずります。危険を知らせているのです。そうすると、中にいるメスの親鳥が穴から顔を出しては外の様子を伺っています。そして、危険を感じたときには、卵を抱いているはずのなに、それを置いて、巣箱から出てきて飛び立ちます。その様子を毎日、観察しながら楽しんでいます。もう、そろそろ雛が生まれてもいい頃なのですが、まだ、餌を運んできている気配がないので、もう少しの辛抱と思って、雛の誕生を楽しみに待っています。
4月8日の始業式の日、子供たちにシジュウガラが巣作りを始めて、苔をお布団にするため、くちばしに加えて運んでいることを話しました。


そのときの子供たちは、目を輝かせて聞いていました。そこで、みんなが持って帰った巣箱を木にかけた人はいますかと聞きましたが、10数人しかいませんでした。少しばかり残念に思いましたが、その10数人の親御さんは、子供と一緒に巣箱を作って、木にかけて、小鳥がやってきて巣を作るのを、今か今かと、親子で楽しみに待たれているのではと想像しただけでほほえましく思いました。せっかく巣箱を設置しても、必ずしも、巣づいてくれるとは限りません。それでも、親子一緒に巣箱を作ったり小鳥がやってきたりするのを待っている気持ちは、親子で共有でき、自然に対する興味や好奇心のみならず、親子の共通体験として、心の絆が育まれてきます。今年、残念ながら巣箱をかけることができなかった方は、是非とも、来春には試みてください。きっと、親子での素敵な時間が持てるはずです。
自然観察園のサクラの花も散って、今は少しばかりですが、シバザクラが満開です。このシバザクラは、昨年の7月に、うめ組のまゆみちゃん、もも組のひろひさくんのお母さんが、担任の晴子先生と500本の苗を数時間かけて、苗床に挿し芽をしてくれたものです。500本も挿し芽をしてくれたのに、少しばかり満開というのは、何故かと言うと、私が大失態をしたからなのです。それは、毎朝、水やりをしなければならないのに、まだ、水やりの習慣がついていないときに、忙しさにかまけて、1週間くらい、水やりを忘れていたのです。


それに気づいて、急いで水やりをしましたが、結局、100本弱しか助かりませんでした。あんなに時間をかけて挿し芽をしてもらったのにと、申し訳ない気持ちになりながら、秋に移植しました。今、少しですが、きれいに咲いています。夏になったら、今度は私が苗を採取して挿し芽にしようと思っています。4月21日には年中組の子供たちが自然観察園に遊びに来てくれました。まだ半日保育なので、ゆっくりとは遊ぶことはできませんでしたが、これから、グミやブルーベリー、イチジク、柿に栗と、いろいろな木の実がなってくるころには、楽しみも倍増してくるはずです。今は私だけが、小鳥を観察したり野菜を作ったりして、楽しんでいるのかもしれません。旬の竹の子もたくさん頂きました。竹の子の料理もいっぱい作ったり、ヨモギを摘んでヨモギご飯にして食べたりして春を楽しんでいます。