「有用な」人的ネットワーク

コミュニケーションの次に松下村塾で吉田松陰が塾生に求めたものを「人的ネットワーク」です。しかも、それは「有用な」人的ネットワークの創造を求めたのです。では、「有用」というのはどういったものなのかというと、「『自分たちが目指すことをやり遂げるために必要なものとはなにか』を考え、仕事や学問の環境や仕組み(組織)をどうやってつくっていくか、師や友人を求める基準をどこに置くかを考えて行動していた」とあります。大切なことは「めざすことをやり遂げるために必要な」ことを遂行するためのネットワークを作ることです。紹介している「松下村塾 人の育て方」はあくまでビジネス書ですので、保育や教育とは違った切り口で書かれていますが、教育や保育においても切り口を変えてみるとこの考えは利用できるものになります。

 

ただ、ビジネスとは違うのは結果がすぐに出るものではないというのが教育や保育にいわれるものであり、より強い動機を求められるということにもあるように思います。また、成績や業績といった目に見える成果があるわけでもないので、抽象的なものを追う形になるのもこういった教育における一つの課題であるかもしれません。ただ、ビジネスにおいて、様々な部署との関わり、営業や製造などの関わりと同じように、保育や教育においても、上司や職員、主任、保護者関係と人との関わりは求められます。そういった人との関わりにおいて、信頼関係を通して人的ネットワークというのはとても重要なものです。

 

松陰にとって人的ネットワークをつくる過程で重要なことは「有用性」であり、こういった視点で仕事の組織図をつくることを進めています。そして、仕事を進めていくなかで起きる小集団をうまく作っていくことの重要性を述べています。それは「自分の仕事を遂行するためにその都度必要な小集団をつくる」ということです。こういった自分の仕事を遂行するために必要な小集団をつくることで、高い生産性をあげることが出来るという言います。保育で言うと、子どもたちにとっていい環境が作ることが出来るということです。

 

保育の中でも様々な小集団は作られます。例えば行事の係であったり、複数担任制の職員関係です。何か新しいことを始めるにあたって、コミュニケーションを取りながら、小集団を絶えず作り課題に向かわなければいけません。

 

ただ、ここで言えるのは何においても「自分が目指すこと」が見えていなければいけません。つまり目的意識がなければ、ただの「作業」になってしまうのです。ここにマネジメントをする側の大きな意味があります。目的意識をはっきりと示す必要があるのです。でなければ組織は与えられたものでしかなくなります。仕事の質を高めるにはこういった目的意識を持たせた集団をつくっていくことが重要になるのです。リーダー自身はこういった有用な人的ネットワークを創造するために、組織全体にそのような考え方を持つように共通認識を持たせることが必要になります。